第11回 トラブルをあらかじめ防止するには?
グラフィックデザイナー 嶺尾美奈
すでにトラブルが起きてしまっていて、今までの応急処置方法でも不安が
あるかたは、「サル売」の第2回、第3回、第4回を、もう一度熟読して
ください。取引開始前の注意点がたくさん書いてあります。
解説を詳しく
読んだら、第2回の【取引先の管理原則】については、空で暗記して言え
るぐらいに頭に叩き込んでください。そのために、箇条書きにしてあるの
です。→こちら
会社員の場合は、価格交渉や売掛金回収の仕事は営業マンの分野で、ク
リエイターは本来このようなことを特別に覚えなくても、自分の専門分野
にのみ詳しければ、どうということはありませんでした。
しかし、いった
んSOHOという道を選んだ以上は、そういうことも自分が引き受けるという
覚悟がなくてはなりません。
本来、営業マンが、会社の研修などで【取引
先の管理原則】などを頭に叩き込まれるわけですが、私たちもそれを、今
ここでやらなければならないということなのです。
新人のSOHOや、逆に何
年も同じ取引先だけでやってきたベテランSOHOが、もっとも、このあたり
の危機管理がおろそかになりがちだと思います。
新しい取引先に巡り会ったとき、つい、人柄がよさそうだったから、とか、むこうは何も知らない
素人なのでこちらの言う通りに運びそうだとか、思ってしまうことはあり
ませんか?
取引先の経営状況をつかむ急所(第4回)に、むこうが素人かどうかと
か、人柄がよさそうかどうかを見ろとは、どこにも書いてありません。
や
はり、見るべき箇所は、原資がちゃんとありそうかどうか、なれ合いで支
払をうやむやにしたことが過去にないかどうか、業務の標準化ができてい
るかどうか(例えば支払日が来たら、業務内容を知らない人でも、担当の
人が休んでいても、機械的にでも何でも支払をしてくれるかどうか)、そ
ういうことを、調べることが先決なのです。
トラブルが起こってしまって、交渉に入るときには、いろいろと証拠書
類などが必要になってきますが、そういう筆者もたいして契約書など交わ
した経験があるわけでもありません。
証拠書類を集める癖をつけることよ
りも、取引を始める前の、事前調査のほうが、何倍も重要なのです。
取引
先の状況を見極める目がかなり正確にできてくると、契約書を正式に交わ
さなくてもほとんどトラブルは起きませんし、相手が何も知らなくても、
人の話をよく聞いて、実行してくれる社風のところであれば、これもたい
てい問題が起こらずに済みます。
また、もっとも、そういう会社であれば、
たとえ個人事業の場合でも、こちらが契約書を交わしましょうと言わなく
ても、お客様のほうから「そのように複雑な進め方の仕事は初めてなので、
契約書を交わしたほうがよさそうですね」と、言い出す場合もあるぐらい
です。
最後に、もう一度繰り返しますが、こちらがいかに経営危機に陥ってい
ても、強引に仕事をとってくるようなことはやめましょう。
それから、意
地でも次の仕事に結びつけようとして過剰なサービスをするのもよくあり
ません。
そういう仕事の進め方は、お客様のほうから見れば「押し売り」
のようであったり、料金をあまり払っていないのにサービスがよすぎると
「何か怪しい企みがあるのでは」と逆に勘ぐられてしまい、本当にお客様
が望まれていることが見えなくなってしまうからです。
自分でいくら「い
いものを納品できた」と思っていても、これでは単なるひとりよがりにな
ってしまいます。
こちらの経営危機を感じさせたりせず、無理な話と言わ
れるかもしれませんが、経営が厳しい状況にあっても余裕の商談ができる
ようになってこそ、本当にいい仕事に巡り合えるような気がするのです。
そして、いつも、お客様の立場を考えることは、忘れてはいけません。相
手が個人商店などであれば、なおさらです。
お客様が本当に無理なく支払
える予算の中で納めてあげることはもちろんですし、その結果こちらが不
満だらけになるような仕事内容でもかえって、お客様のためによくありま
せん。
お客様のほうが「気持ちのよい買い物ができた」と思え、こちらも
「気持ちのよい仕事ができた」と、そう思えるようなビジネスを続けてい
きたいものです。
次回は、実際に契約書を交わすことになった場合、どのような内容、書
き方にするべきなのかをご紹介したいと思います。
題して、<<契約書のイロハ>>です。お楽しみに。